自閉症の理解
自閉症の理解
問題行動の裏
表に現われる問題行動(氷山の見える部分)よりも、
根に有る認知障害(氷山の水面下)を考慮し、氷山の見えない部分の影響がいかに大きいかを認識し、適切な療育を行なう必要がある。
表面化している問題行動のみの解決策を性急に求めるのではなく、
理論(仮説)より実際の子どもの観察から自閉症を理解し、 問題行動の裏に有る 子どもの切実な気持ち、苦しい気持ち、隠された気持ち に思いを向け、その人にとって
そうせざるを得ない理由は何かということを、 認知障害の面から追求することによって 援助の方向性が見えてくる。
0 |
問題行動 (氷山の見える部分) |
根に有る認知障害 (氷山の水面下) |
1 |
多動 |
不安と自信のなさの現われ。 じっとしていると どうしても自分の気持ちと向き合ってしまい、絶えず動き回ることにより
不安な気持ちをまぎらわす。 |
2 |
奇声 |
不安の叫び。 喜びに対してもブレーキがかかりがちの子どもは うれしい時にも 奇声になってしまうことがある。 |
3 |
こだわり |
それをしないと何か落ち着かない。あるパターンの儀式(習慣)をすることによって
心の安定をはかっている。一定のパターン化した行動に没頭することにより 不安を鎮めている。 |
4 |
パニック |
苦しい気持ちを表現せず 抱え込んでしまう傾向のある自閉症の子どもたちは、ちょっとした、例えば、好きな遊びを止められた、
何かをするように働きかけられた、自分の思いが伝わらない、等々、日常の色々な事がパニックのきっかけになり、心いっぱいになった気持ち・苦しさが爆発してしまう。
直接の引き金となった出来事だけではなく、そのウラにある長い間溜め込んだ気持ちの方を探ること。
例えば、ミニカー並べが好きで(←こだわり)所構わずミニカーを並べ(←自分の行動が周囲の迷惑であることを理解出来ず
全く気にせずにいる)遊びを止められると気持ちが激しく乱れる。(←コミュニケーションの不調)さらに「なだめられること」や「気持ちの切替え」もうまくいかず、
ついにはパニックに陥ってしまう。 |
5 |
自傷 |
自信の無さの現われ。自分に対する怒りの表現でもある。 怒りの抑圧が強い自閉症の子どもたちは、その怒りが
もろに自分自身に向いてしまう。 |
6 |
他害 |
周囲の人に対する攻撃は恐怖の現われ。 自閉症の子どもたちは相手の感情が解からないので、聴覚過敏で泣き声が嫌いな自閉症の子どもは、泣いている子どもをたたきに行く。
他害は「友だちと関わりたいけれど
うまく関われる自信がない」という悔しさの現われでもある。 「やってはいけない」 と分かっていても
感情を自分で抑えられず、強く叱ると、自分では止めることができないジレンマから
パニックを起こしたり、自傷行為が出たりする。 人との関わりを持ちたいためか、人の叱責を引き出すような挑発をわざとしてくるようなとき、強く叱責すると
かえってエスカレートする。 相手を理解出来ないので、相手を怒らせ反応を見て安心する。 |
7 |
おうむがえし |
相手の言葉が理解出来ないけれど 相手が応答を期待しているのは分かって、とりあえず相手の言葉を繰返してみるが
どうすればいいのか分からずフラストレーションがたまる。 |
8 |
脱衣 |
特定の肌触りへの触覚過敏。ある下着をサンドペーパーと感じたり、 新しい下着をごしごしと感じたり、縫い目を針のように感じたり・・ |
9 |
偏食 |
口の中の触覚過敏という場合も・・ |
10 |
タイムスリップ |
中学になってから突然3才の時のことを思い出して怒りだしたり・・思い出すとその時の気持ちになりきってしまう。
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注意したいこと
- 相談の場で「はっきりするまで少し様子を見ましょう」と言われ、早期に適切な療育を受けず・・
- 「言葉が出ない」と相談すると、「もっと言葉かけを」と言われ・・
言葉が理解出来ない自閉症の子どもに言葉かけを続けるとますます混乱・・
- 「他人との関わりがうまく出来なくても、本人に関わりたいという意思があるから自閉症ではない。自閉症なら関わろうという気持ちを持たない。」と言われ・・
《↑間違い》